擁壁のやり直しと補助金のお話

擁壁 1軒目

こんにちは。キンキンです。建築も造成も素人だった私が8年前に土地を購入して戸建てを新築するまでの間に、擁壁工事をハウスメーカーではなく直接、擁壁業者さんにお願いし、市の補助金(助成金)を受けるまでの経緯を書いてみます。

この記事で分かること

・素人が擁壁工事に初めて挑戦し、一応問題なく造成が完了したという事実
・施主の目線で、擁壁工事を実施する際に気にしておいた方がよさそうなポイント
・私がつくった擁壁に対して、良かったことと後悔したこと

大前提:私が購入した土地について

私が購入した土地は横浜市にあります。その土地の条件は以下のようなものでした。

・高さ3m、幅15m程度の古いRC擁壁を含む古屋ありの土地(現況渡し)
・土地の前面道路の幅員が4m未満であったため、再建築に際してはセットバックが必要であった
・古屋は築年数がかなり古く、再建築無し=リフォームによる再利用は現実的ではなかった

横浜市のような高低差のある地域で土地を検討すると、擁壁がある土地が多くみつかると思います。擁壁がある土地に家を立てる場合に、必ずやり直し(既存擁壁の撤去と新規築造)が必要になるわけではありませんが、私の場合、前面が4m未満の「狭あい道路」といわれる道路に面していて、建物の再建築にあたっては条例によってセットバック(道路幅員の拡張)が必須でした。

さらに条例によって必要とされた幅員の拡張幅が、私の購入した土地の擁壁にかかっていたことから、物理的に既存の擁壁を撤去することが求められたわけです。

なぜ、擁壁のやり直しが必要な土地を購入したのか

私の場合は、セットバックによって擁壁のやり直しが必要になることを購入前から知っていました。それでも、敢えてその土地を購入したのにはもちろん理由があります。

・高低差によって建物からの素晴らしい眺望やプライベートが担保された土地だった
・周辺エリアの坪単価と比べると、割安な価格であった
・各種条例を調べると、それなりにしっかりとした補助金(助成金)が出る可能性があった

これらのいずれかが欠けていたら、当時の自分も購入の判断はしなかったと思います。正直、擁壁のやり直しなんて面倒だし、費用もかかる。建物を建てるのも初めてだったし、古屋の解体も自分持ちでしたから。

まず、何をやったか

1.相見積もり

土地の契約の前に、相談していたハウスメーカーに擁壁のやり直しの概算費用を出してもらいました。擁壁をハウスメーカーが敬遠するっていう話はよく聞きますが、私の場合もご担当の方はそんな反応でした。結果、出していただいた概算見積は1,000万円を超える金額で、私のトータル予算にはハマらない額でした。

ただ、そこで諦めず、実際ハウスメーカーさんも「個別に工事業者さんに依頼されたら」ということでしたので、自分で横浜近辺の擁壁工事の実績のある会社さんを5〜6社探し、相見積もりをとることにしました。もちろん、相見積もりであることは個々にお伝えしました。

2.補助金(助成金)の制度チェック

横浜市には、当時、セットバックに関わる整備危険な崖地対策工事に対する助成の制度がありました。結果、どうやら適正な手続きを行って行った工事に対しては市から助成が受けられる可能性があることがわかってきました。専門的な用語も多く不明点も多くあったため、市に相談したり、見積もり先の擁壁会社さんに相談したりしました。

もちろん、自治体の助成については予算の都合もあるし、その時点で確実に助成が受けられると分かったわけではないのですが、助成が受けられれば経済的にも大きなメリットがあると確信しました。

擁壁の種類:RC擁壁か間知石積みか

擁壁についてイチから勉強していくと、私が検討している土地の条件だと、コンクリート擁壁(RC)と間知石積み(間知ブロック)という2パターンが想定されました。それぞれの特徴の詳しい解説は色々なページがありますので割愛しますが、当時の私の整理は以下のようなものです。

コンクリート擁壁(RC)
・文字通り、擁壁の壁面にあたる部分がフラットなコンクリート
・地面から垂直に立ち上がるため、土地の有効面積を最大限使える
・底版という擁壁の基礎にあたる部分の面積が大きく、結果、工事費が高くつくことがある

間知石積み(間知石ブロック)
・ブロックを組み合わせて積み上げる擁壁
・地面から斜めに立ち上がるために、土地の有効面積(擁壁上部)が減る
・条件によっても異なるが、RC擁壁よりも費用が安い

いずれもメリット・デメリットがあったため、私の場合は両方の方式でお見積りを依頼しました。

見積りを確認する

各社さんから見積もりを頂戴しましたが、ざっくりと以下のような結果でした。
※4社分のみ記載してますが、残りの会社さんからはご辞退のご返答だった気がします

・RC擁壁

A社B社C社D社
500万円(ご提案無し)490万円800万円
RC擁壁 …撤去費用、仮設工事、土工事、山留め工事、築造工事、諸経費含む 地盤補強費は含まない

・間知石積み

A社B社C社D社
380万円480万円380万円(ご提案無し)
間知石積み擁壁 …撤去費用、仮設工事、土工事、山留め工事、築造工事、諸経費含む 地盤補強費は含まない

擁壁をお願いする会社を決定!

結果的に、お見積りが一番良心的で、ご担当の方の対応も良く、そして市の助成金申請の経験のあったC社さんに決めました。繰り返しですが、私は住宅も土木も造成も全くの素人だったので、きちんと見積もりや会社さんを「評価」できたのかどうか分かりませんが、、少なくとも評価の軸は自分で勉強して、責任をもって決めないといけないですね。。

一方で、実はその前後で土地の購入を決めて、契約を済ませたのでした。複数の会社さんに見積もりをお願いし、バラバラとお見積りが上がってきた段階である程度の相場感が分かってきたのと、助成金のハードルについても理解が進んでいたため、自分のなかで「買ってよし!」と判断したという経緯です。

土地は水物。不動産屋さんに煽られたのもありますが(笑)。

間知石積み方式で工事が始まる!

上記の通り、RC擁壁と間知石積みで見積もり段階で100万円の費用差があり、個人の住宅建築予算では100万円の差は無視できず、安い方の間知石積みに決めました。結果的にこれが多少の後悔ポイントになるわけですが。

で、実際の工事の前に、まず設計がスタートします。横浜市では2mを超える擁壁の築造にあたっては、工作物確認申請が必要であり、且つ、助成を受けるための仕様に沿った設計が必要になります。

そして、既存の擁壁を撤去します。擁壁の下の地面から1mぐらい、かなり深く掘っていました。掘ったら、地耐力確認調査というのをやります。これは、擁壁を築造するにあたって期待する地面の硬さが担保されるかどうかを調べるものです。私の土地の場合は、設計した間知石積みを築造できるぐらいの地耐力があったので良かったのですが、RC擁壁の場合は地耐力が足りない可能性がありました。

したがって、RC擁壁を採用していた場合は地盤補強の費用が追加で発生した可能性があります。私がお願いした業者さんによると、RC擁壁と間知石積みとでは、地盤に求める地耐力が異なるんだとか。結果的に、間知石積みを採用したメリットがここでも生まれたのかなと思います。

工期は約2ヶ月。結構かかりました。でも、設計から始まり、既存擁壁の撤去、地耐力調査、間知ブロックの積み上げ含めてかなり専門的な仕事だと感じました。

市の助成を受ける

少し記憶が曖昧なのですが、助成を受けられたのは狭あい道路に関する整備費用の助成金だったと思います。助成の対象となる工事については、以下の項目です。

・塀の撤去費用 既存擁壁の上に金属製のフェンスやブロック塀があったのでその撤去費
・既存擁壁の撤去費用 既存の擁壁はRC造だったのでその撤去費
・新規擁壁築造費用 高さによって助成単価が異なりますが、擁壁そのものの築造費
・排水設備移設費 既存擁壁にからむ部分に給排水管があったのでその移設費

助成の額が最も大きかったのは、擁壁の築造費でした。

幾ら助成されたのか、トータルで幾らでやり直せたのか。

具体的な金額については内緒ですが、この助成を受けられたのはとても助かりました。元々ハウスメーカーさんから頂いた概要費用1,000万円超が、相見積・助成金によってここまで下がるかといったレベルまで圧縮することができました。

擁壁

施主目線での擁壁やり直し時のポイント

1.土地の購入前に必ず擁壁のやり直し予算を確認しよう

私の場合、やや見切り発車ではありましたが、土地契約前に費用相場が分かったことや助成の存在を知ったことで購入に踏み切ることができました。後から知ったこともありますが、擁壁は本当に難しいです。選ぶ擁壁の種類はもちろん、現場に工事車両を入れることができるのか、そもそもどういう高さ・長さの擁壁をつくるのかによっても、費用が数百万円は変わります。土地を契約した後に何百万円も擁壁にお金がかかると大変です。擁壁のある土地を検討する際には必ず工事業者さんに相談。状況によっては自治体の整備助成金制度なども確認したいところです。

2.住宅ローンの融資対象になるかも確認しよう

意外と盲点になりがちだなと思ったのが住宅ローンの融資対象についてです。私の場合もそうでしたが、擁壁は内容次第で数百万円がかかる大きな買い物です。しかし、金融機関によっては擁壁を融資対象にしない会社もあるんだとか。また、私のように擁壁をまず先に工事する場合、建物よりも先に擁壁が完成します。擁壁が完成すると代金の支払いを求められるわけですが、数百万円を現金で払える方ならよいのですが、住宅ローン融資に含めたい場合、金融機関から建物の引き渡し前に分割融資してもらう必要があります。よって、住宅ローンを選ぶ際に「擁壁が融資対象か」「擁壁の費用に対して分割融資の実行が可能か」を確認しておいたほうがよいと思います。

擁壁をやり直して良かったこと、後悔したこと

良かったこと。

私の場合、土地の購入→住宅建築にあたって、擁壁のやり直しは必須でした。上述の通り、セットバックが必要な土地に擁壁が存在していたからです。ですが、当時、しっかりとした業者さんに設計してもらってやり直したことで、土地と建物を売却することになった際にも買主さんに擁壁自体に不安を持たれることはありませんでした。

建物の築後8年と築浅の部類に入る物件として売り出したわけですが、土地にかかる擁壁も同じ8年と新しめであったという感じです。横浜では古い擁壁、現在の制度では採用できない不適格擁壁のある土地が沢山あり、そのような土地を購入すると、やり直しが必要になることがあります。しかし、私の土地の場合はそれが必要のない物件になったということになります。

後悔したこと。

唯一、後悔したことがあります。それは、間知石積みではなく、RC擁壁を選ばなかったことです。当時見積もり上は100万円の差でした。私は擁壁を建てた後に住宅を建築し、その後に間知石積み擁壁の上を覆うように大きなウッドデッキを建てました。それによって斜めに立ち上がる間知石積みの有効面積の減少を補ったというわけです。

ですが、RC擁壁を最初から選んでいれば、大型のウッドデッキは必要なかったかもしれません。さらに、土地の評価額も間知石積みよりはRC擁壁の方が高くなっていたかもしれません。

いまになって考えれば、100万円の差は対して大きな額ではなく、むしろRC擁壁にした方がお得だったのかもしれません。建物が上にのる擁壁の場合は、建物を壊さない限りは擁壁のやり直しは難しいと思います。これから同様の条件で擁壁工事を検討される方がいらっしゃったら、見積もりなどをよく確認したうえで、長期目線でどのような擁壁が良いかを考えてもらうとよいかと思います。

まとめ、というか所感

擁壁って地味です。私も自分がやり直しするまでは「ようへき」って読み方も分からなかった気がします。ただ、一度着目すると、街中(特に横浜とか)には至るところに擁壁があります。

私のように一度関わると、街中の擁壁に目がいくようになるし、「これは不適格擁壁だ」とか「この擁壁どうやって工事したんだ?」とか余計なお世話な感想を抱くようになります(笑)。

そうやって『擁壁リテラシー』を高めることによって「どんなメリットがあるか」と考えると、私の体験談としては「土地を格安で購入できた」ということかと思います。

本記事では書ききれなかった詳細もありますので、そちらはまた別の機会に。

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